久しぶりに父に会った
顔も言葉も空気も 険しくて
これでは 何者も遠ざけてしまうだろうなあ という感じ
すでに何者も父から遠ざかってしまったのだろうか
そういうわたしも父から遠ざかってしまったのだろうか
父の後ろにまわってみる
何十何百回と見た 懐かしいはげあたま
かつては堂々と笑いを生んでいたというのに
そんなあたたかなムードは遠ざかり さわればたちまち険がとんできそうで
うっすらのぞく頭皮さえ ぶすっぶすっと火の根をふくみ てらてらと光る
お調子者でお茶目で笑いをたやさないあの父は どこへかくれているのだろう
離れて住むわたしは みんなで父のかくれんぼの鬼になってあげよう と言った
近くに住む妹は さがさなくたってそのうち自分ででてくる と言った
一緒に住む母は いろんな人がいる いろんな年のとり方がある と言った
だれが父に近いのかわからないけれど
何者より 家族はまだ父の円の中にいる そんなことを思った日だった