ご無沙汰中のご無沙汰です。
ようやく詩ができました。サンタさんに感謝!
といってもさほど力作というわけではありません。むしろ力をいれず
ほったらかしてほったらかして、ちびちび完成しました。
血の海の記憶
こたつに足をつっこみ
半折りした座布団に頭をのせ
いつもの景色を九十度回したところで
少女はぎゅっと目を閉じた
錆びて赤黒い血の海の
荒々しくうねる波に
少女は必死であらがった
けれども波は重く圧しかかり
海の腹の底へ引きずり込もうとする
となりの部屋からもれる
包丁とまな板の紡ぐ音
湯気に乗ったかつおだしの香り
少女はすがりつきたくて泣いた
海が突き刺す痛みに
少女は「かんにんして」と叫んだ
海は生温かい声で
「しんぼうしいや」と言いながら
容赦なく痛めつけてくる
小走りの足音が近づき
やがて部屋のふすまがザザと開き
母の匂いがしたとたん
少女は「しんぼうできん」と怒鳴った
海はゆっくりと去り
少女の体は解放された
いつもどおり食卓の向かいに座る
この母も海を知っているのだろうか
少女は何も話せぬまま毎月ずつ大人になった